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食物アレルギーとゼラチン

(1)食物アレルギーとは

人には、細菌やウイルスなどの外敵の侵入に対して体を防御する免疫という仕組みがあります。「疫」(病気)を免れるという語義の通り、人にとって無くてはならないものですが、その免疫系が、逆に体に不利益な状態をもたらすことがあります。それがアレルギーです。

食べることも、体にとってみれば、自分以外の異物を体内に取り込むことに他なりません。消化吸収された食品中のタンパク質が、異物(抗原)として認識されると、それに対応する抗体というマーカーが作られ、将来的な異物の侵入に備えます。(感作)抗原と抗体は、鍵と鍵穴のような関係があり、再び、同じ異物が体内に入ってくると、抗原抗体反応によって、アレルギーが引き起こされます。身体は、基本的に自分以外のものの存在を認めないのですが、食物すべてを拒否すると非常に不都合なため、経口的に摂取される食物については、特異的に免疫応答を抑え、その存在を認める仕組み(免疫寛容)が働きます。何らかの要因で、このバランスがくずれ、過剰に防衛反応することが、食物アレルギーの理由とされています。

食物アレルギーは、その症状をもつ人には非常に深刻な問題です。しかし、食中毒菌や自然毒のように万人に共通するリスクではありませんので、アレルギー症状をもたない人は、卵や乳製品同様、ゼラチンについても特別に考える必要はありません。

(2)ゼラチンアレルギーについて

かつて、ゼラチンは、人に対してアレルゲン性を示さない物質であると考えられてきました。しかし、1990年半ば、ワクチンに添加されたゼラチンに起因するアレルギー症例が、国内で相次いで報告されました。これは、乳児のワクチン接種時期を変更した日本特有の事情によるものです。1988年以前には、三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)は、二歳児に接種されていましたが、ワクチンの弱毒化に成功したため、より効果的な予防をねらって、1989年以降、ワクチンの接種時期を、三か月から二歳未満の幼児に前倒ししました。当時、三種混合ワクチンにはゼラチンが安定剤として使用されており、結果的に非常に幼い時期にゼラチンに感作されることとなり、その後の麻疹、おたふく風邪ワクチンの接種でアレルギーが引き起こされたと考えられています。このことから、厚生省(当時)が、三種混合ワクチンからゼラチンを除去する措置を行ないました。その結果、ワクチン接種によるゼラチンアレルギーは、1988年以降、1996年ごろまでに限定され、その後、新たな発症患者は報告されていません。

他方、ゼラチンの食品アレルギーとしての症例は、非常に稀で、上記のワクチンによるアレルギー患者でも、多くの方は食品として摂取したゼラチンでアレルギーを起こさないという報告があります。

平成13, 14度と平成17年に実施された「即時型食物アレルギー全国モニタリング調査」(海老澤元宏・今井孝成)によると、

ゼラチンの即時型食物アレルギー症例(食後1時間以内にアレルギー症状が出て、医療機関を受診した)は、平成13, 14年度は、全3882度数中18度数(0.5%)で、平成17年度は、全2295度数中 7度数(0.3%)と報告されています。このうち、アナフィラキシーショック症状が出たものは、平成13, 14年度調査での全 395度数中 1度数(0.3%)のみでした。

魚由来ゼラチンの抗体を持つ人もおり、動物種によってゼラチンのアレルゲン性に差があるとは一概に言えないようです。

(3)アレルギー食品の表示制度

食物アレルギーは、その症状を持つ方々には、非常に深刻な問題であるため、加工食品の使用原材料に関する情報開示は重大な意味をもちます。そのため、アレルギー食品の表示ルールが法整備され、適切に運用されています。

平成13年(2001年)3月21日に、食企発第2号、食監発第46号として、「アレルギー物質を含む食品に係る表示制度について」が通知されました。(平成21年1月22日最終改正)

アレルギー物質を含む食品のなかで、特に症例数が多いもの、また、症状が重篤であり生命に関わるため、特に留意が必要なものとして、次の7品目は加工食品への表示が義務づけられています

卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生

症例数が少なく、省令で定めるには今後の調査を必要とするものとして、ゼラチンを含む次の18品目については、加工食品への表示が奨励されています

あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

(4)ゼラチンアレルギーの検査について

ゼラチンアレルギーの検査は、病院で受診可能です。病院に行って採血してもらい、血清中のゼラチンに特異的な抗体の量を測定します。この結果にもとづき、お医者さんがゼラチンアレルギーかどうかを判断します。この方法は、アレルギー検査として一般的で、たとえば、スギ花粉症であれば、同様に血液を採ってもらって、血清中のスギ花粉に特異的な抗体を測定します。

どのようなアレルギーの診断検査ができるのか、臨床検査会社の一つである三菱化学メディエンス(株)にHP情報で詳しく説明されており、以下に、食品の一例を示します。アレルギー食品の表示制度の対象25品目以外にも、色々あることがわかります。

牛乳、卵白、卵黄、米、ソバ、小麦、大麦、オート麦、アワ、ヒエ、キビ、トウモロコシ、大豆、インゲン、エンドウ、ピーナッツ、ココナッツ、アーモンド、クルミ、ココナッツ、イチゴ、リンゴ、モモ、バナナ、メロン、オレンジ、グレープフルーツ、キウイ、マンゴ、アボガド、洋ナシ、トマト、セロリ、パセリ、タマネギ、スイカ、人参、ヤマイモ、ジャガイモ、サツマイモ、カボチャ、ほうれん草、タケノコ、ニンニク、ゴマ、マスタード、麦芽、ビール酵母、カカオ、チーズ、グルテン、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、エビ、ロブスター、カニ、アサリ、牡蠣、ホタテ、イカ、タコ、サバ、アジ、イワシ、タラ、カレイ、サケ、マグロ、イクラ、タラコ、ゼラチン

http://www.medience.co.jp/allergy/koumoku.html

(5)まとめ

日本における即時型食物アレルギーの原因食品わが国の食物アレルギーの有病率は、乳児が約10%、3歳児で約5%、学童以降が1.3~2.6%程度で、全年齢を通して、1~2%程度と考えられています。また、アレルギーの原因食品の内訳は、右図の通りで、卵と乳、小麦が全体の7割近くを占めています。これに対して、ゼラチンの症例は1%未満です。

日本では、過去、ワクチン接種によりゼラチンアレルギー症例が多発するという不幸な事態が起こりましたが、ワクチンのゼラチンフリー化の対策によって、現在ではワクチンを要因とする新たな患者の発生は見られません。また、ゼラチンの食品アレルギーは、非常に稀ですので、自覚症状などがなければ、その他の食品同様、食生活からゼラチンを特に避ける必要はありません。すべての食品に言えることですが、特定のものばかり食べるのではなく、バランスの良い食生活を心がけることが重要です。

 

もちろん、ゼラチンにアレルギー性が全くないわけではありませんので、ゼラチンを含む食品を食べて気がかりな症状が出るようでしたら、医療機関にご相談下さい。

参考

即時型食物アレルギー全国モニタリング調査まとめ(H13, 14年度、H17年度)

原因食品 症例数
鶏卵 2,392 42.1
乳製品 1,034 18.2
小麦 510 9
エビ・カニ 305 5.4
ソバ 253 4.5
落花生 205 3.6
イクラ 190 3.4
大豆 115 2
果物類(キウイ、バナナ、モモ、リンゴなど) 258 4.5
魚類(サケ、マグロ、サバ、アジなど) 133 2.3
鶏・豚・牛肉 80 1.4
イカ・タコ、貝類 67 1.2
ナッツ類(クルミ、カシューナッツ) 64 1.1
野菜類(ヤマイモ、ゴマなど) 49 0.9
ゼラチン 25 0.4

(今井孝成、海老澤元宏:平成14年・17年度厚生労働科学研究報告書データを集約)